芭蕉全句集

芭蕉全句集を読む。

どちらかというと辞書のように季節順に並んでいて、最初から1つずつ読んでいくのも何か違うような気がしたので、好きなページを開いてそこの句を読む、というスタイル。

507 野ざらしを心に風のしむ身哉
760 しにもせぬ旅寝の果よ秋の暮

老荘思想は高校でやったくらいしか知らないのですが、野ざらし(風雨にさらされたしゃれこうべ)を始めとした達観へのあこがれ、というものを解説では見いだしていて、宗教・世俗・風雅の三つの世界を行き来する芭蕉について説明されている。
で結局大垣にまで着いて、死にもせず秋の終わりになったというわけで。
一種、野ざらしへのあこがれと、それが成らなかったことへのしかし安堵感、みたいなものも感じる。

昔は、秋や冬は死の季節だったのだなあ、と、この2つの句やいろんなお話を聞いて思った。
私のイメージは「踏まれても根強く忍べ道芝よやがて花咲く春よ来るらん」であるから、現代的だし、またそれ以上に「若い」感覚なのだろう。根強く忍んでいればいつか春が来る、その希望というのは、若くなくては無理だ。
だって、年寄りだと、春が来る前に死んでしまうかも知れないから。
冬を越えるというのは、昔は、とてもとても大変なことだったんだ。

井上雄彦『バガボンド』の土の章で、武蔵達は痩せた土地で稲を作ろうと奮闘するのだけど、冬が来る度に、つまり暗い季節になって食べ物が無くなり植物も眠り厳しい寒さが訪れる度に、一人また一人と餓死していく。みんな冬を越えられなかったのだ。最後にはやせ衰えた秀作も死んで土の章は終わる。
だから、冬は死の季節というわけ。

某御仁に「万葉集の時代を描くにしては、死の季節を越えてようやく明るい春がやってきたその喜びがない、それは作品が全部明るすぎて暗闇がないからだ」と言われたのは、偏に、「死」がそこになかったということなのかなと思う。人が容易く死ぬ、暗い時代。死と親しい時代。
私は、同じ時代の同じ世代の人々と比べると、幾分か死に親しみを抱いているのだけど、それでも現代人だから、やっぱりあの時代、というか今でないあらゆる時代の感覚には到底及ばないかも知れないな。

野ざらしへのあこがれ。
それは、どのように生きるか、ではなく、どのように死ぬか、を望んでいたということなのかな。
生きることと死ぬことが天秤の上で釣り合っていた時代ということなのかな。
少しずれるけど、結婚も死も旅立ちという意味では同じだなと考えたことがある。
だから結婚する時も死ぬ時も式をするのだ、と。

芭蕉はどこかで、この旅で死ぬことを望んでいたのかもな。どこかで、だけど。

翻って現代の自分は、というと、
何のために生き、何に命を賭け、どのように死ぬか、いつも考えていられたらな、と思った。
とりあえず、そこんところが結論です。
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tag : 作曲 俳句

2015-07-20 : 由無事 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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Author:まつい

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愛知県立芸術大学音楽学部音楽科作曲専攻卒業
四日市市民オペラ「椿姫」副指揮者
三河市民オペラ「トゥーランドット」副指揮者
オペラ工房元副指揮者
名古屋音楽学校作曲科元受講生
混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ28期OV
(名古屋大学文学部人文学科日本史学専攻近世史研究室卒業)
長良高校コーラス部平成14年度卒業生

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